反復性肩関節脱臼

反復性肩関節脱臼

  いわゆる「脱臼グセ」です。肩は一度脱臼すると、若年者ほど再脱臼しやすいのですが、これはほとんどが初回の脱臼時に、上腕骨が前方に脱臼しないように抑える役割を持つ「下関節上腕靭帯」が肩甲骨から外れてしまうことが原因です。この状態では自然修復することはなく、手術が必要となります。ただ、全員が再脱臼するわけではないので、さすがに初回の脱臼のみで手術が必要となることは少ないのですが、2回以上脱臼してしまった方は、やはり手術を検討した方がいいと思います。通常はやはり関節鏡を用いてこの部分を修復する「関節鏡下バンカート修復術」を行います。

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 通常、肩関節は、上腕骨と肩甲骨は「下関節上腕靭帯」という強靭な靭帯で結ばれています。「下関節上腕靭帯」は「関節唇」に付着しています。

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脱臼するときは、通常は前方に脱臼します。このとき、「下関節上腕靭帯 ー 関節唇」は保たれても、「関節唇 ー 肩甲骨」は壊れてはがれてしまいます。

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脱臼は整復されても、「関節唇」は肩甲骨からはがれたままです。「下関節上腕靭帯」は肩甲骨の付着を失い、たるんだままになっています。このままでは、上腕骨が前方に脱臼しようとする力をブロックしてくれるはずの「下関節上腕靭帯」が機能してくれません。

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手術の目的は、はがれてしまった関節唇を肩甲骨に結び、「下関節上腕靭帯」を再び緊張させることです。  「下関節上腕靭帯」の緊張は肩関節にとって非常に重要で、軽微な力で簡単に脱臼しやすくなっていた肩関節を安定化させることができます。

脱臼術前後方鏡視

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脱臼術後後方鏡視

後方から見た画像です。画面奥が前方です。つまり、脱臼するときは画面奥に脱臼します。術前に比べて術後は前方(画面奥)の壁が形成されているのがわかります。

脱臼術前前方鏡視

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脱臼術後前方鏡視

今度は、斜め前方から見た画像です。画面左が前方です。つまり、脱臼するときは画面左に脱臼します。術前に比べて術後は前方(画面左)の壁が形成されているのがわかります。

※ 通常、この手術を関節鏡(内視鏡)を使って行います。ただし、病態(壊れている部分や程度)や、社会的状況(例えば、スポーツ選手は競技特性や年齢など)によって、術式を変更します。