五十肩とはいったい何でしょう。あまりにも一般的な病名なので、肩が痛い状態を何でももかんでも五十肩と呼んでしまう風潮があるように思えます。実は、五十肩は非常に定義があいまいで、我々専門医の間でもいろいろな意見が出されているのが現状です。ただ、本当の意味での五十肩というと、特にきっかけがなく肩関節の痛みや動きの制限が起こるものを言います。
症状
通常、炎症期→拘縮期→回復期という経過をたどります。
①炎症期 関節内に炎症が起こる最初の時期です。この炎症のため、状況によっては夜中に痛みにより目が覚めてしまったり、日中も安静にしていてもズキズキした痛みに悩まされたりすることもあります。
②拘縮期 ズキズキした痛みが一段落すると、関節の動きの制限が出てきます。「腕が挙がらない」という状態です。この時点でも、無理に動かしてしまうと痛みを伴います。
③回復期 徐々に関節の動きも回復してくることが多いです。ここまで来るのに数か月から、長ければ一年かかることもあります。しかし、経過によっては、関節の動きが回復しない、違和感が残ってしまった、などということもあります。
治療
①炎症期 炎症を抑えるため、ステロイドという薬を関節内に注射します。通常は1週間から2週間に1回、夜間の痛みや、日中の安静時の痛みが落ち着くまで行います。この時期に、痛みをこらえて無理に動かすと、さらに関節を痛めてしまいます。したがって、「胸張り体操」や「肩すくめ体操」など、肩関節に負担のかからない運動を始めていきます。
②拘縮期 この時期には、リハビリがメインになります。実は、肩の関節は、体感や胸郭などの動きに大きく影響されています。肩を無理に動かすのではなく、これらの動きを出していかなければ、日常動作での肩への負担は減りません。したがって、リハビリでは肩甲骨や肋骨、脊椎、骨盤など、加齢によって低下したこれらの柔軟性を回復させることが重要です。ただ、リハビリ通院にも限界があることが多いため、体操を指導させていただき、定期的にチェックするということでも効果はあると思います。
③回復期 回復期になっても、関節の動きに著しい制限が残ってしまった場合は、手術をした方が良いこともあります。手術は関節鏡(内視鏡)を用いて、硬く厚くなった関節包を一周切開してくる方法を行います。